物語のある家づくり 第13回

フレキシブルに使いまわせる
観光ハブとしての刃物屋

刃物屋三秀・吉田様(関市)

刃物屋三秀

老舗の刃物屋として、伝統技法で製品をつくるだけでなく、関市の魅力を国内外へ伝えることにも力を注ぐ吉田様。
三代続く店の改装に込めた思いを語っていただきました。

時間をかけて練ったイメージ

世界でも有数の刃物の産地として知られる関市。長良川の清らかな流れとともに延びる国道156 号沿いで、ひときわ目を惹くのが2018年1月18日にリニューアルオープンした「三秀」です。
1938年の創業以来、卓越した技法を受け継ぐ刃物屋の三代目として、より魅力ある店づくりを追求してきた吉田和弘さん。「ものを売るだけではなく、ものづくりに携わる『ひと』や背景にある『こと』についても広く伝え、関市の魅力を知ってもらいたい」と考え、後輩でもある宮部建設の建築士に相談したのは、2015年のことでした。

刃物屋三秀

「ぱっと見ただけでは、何屋なのかわからない…。そんな感じにしたいというのが、まずありました」と吉田さん。
富山にある鋳物メーカー・能作の複合施設をはじめ、代官山のTSUTAYA、世界でここにしかない特別な場と仕掛けをコンセプトに打ち出すギンザシックス…。モノを売ることだけではなく、空間を大切にしている各地のスポットへ足を運び、イメージを膨らませていきました。

刃物屋三秀

「そこで撮った写真やインスピレーションを得た専門誌を見せながら、改装のイメージを伝え、あとはほぼお任せでした(笑)」。
宮部建設ががこれまで手掛けた施工例をニュースペーパーなどで見ていたこともあり、安心して委ねることができたと言います。

刃物屋三秀

打ち合わせで細部まで形に

「こちらの言うことをすべて鵜呑みにするのではなく、『ここはお金をかけなくてもいい』、『ここは妥協してはダメ』など、はっきりと言ってくれたので信頼できました。他の工務店だったら、もっと予算が膨れ上がっていたかもしれません」と吉田さん。

刃物屋三秀

内装にどんな材質を使うかといった細かな部分についても、打ち合わせの段階でしっかりと固まり、施工が始まってから変更したことは何ひとつなかったと言います。
特に気に入っているのは、刃物研ぎの実演をはじめ、ワークショップの場として設けた一枚板のカウンターです。天板には樹齢200年の長良杉を使用。囲いの部分は、温かみを感じさせる独特な風合いを持った大谷石にしました。天然の石材を敷き詰めたかのように見える床は、実はプラスチックでできたータイルです。

刃物屋三秀

「本当は床も石にしたかったけれど、そうするとかなり予算がかかるということで、宮部さんが提案してくれました。こっちの方が掃除もしやすいなど、先のことを考えてアドバイスしてくれましたね。和紙のような壁紙も、金箔もすべてクロスです。イメージに合うものを探すのは大変だったと思います」。

刃物屋三秀

伝統を体感できる場にしたい

今回の改装でこだわったのは、「とにかく明るく、広く見せること」でした。それを叶えるため、建物の前面はガラス、仕切りは耐久性の高い透明アクリルに。営業中は常に自然光が差し込む造りになっています。
「どんな場所で、どのようにして刀を作っているのかを見せたい」と、入り口のすぐ横には、国内の民間施設では初となる日本刀鍛錬場を設置。事前に予約すれば、刀匠による鍛錬を見学したり、加熱した玉鋼の塊を叩く体験が楽しめる場です。

刃物屋三秀

刃物づくりの工程を紹介するギャラリーの奥には畳スペースを設け、床の間のように四季折々のしつらえを楽しめる空間として活用しています。
「畳のスペースには、炉が切ってあるんです。先日、外国から要人が来た際には、ここでお茶を点ててもてなしました」と吉田さん。京都の漢字ミュージアムや岡山の備前刀剣博物館を見学した際に思いついたアイデアを形にしてもらったそう。

刃物屋三秀

「日本刀の伝統技法ど、玉鋼から刃物になるまでの製造工程を見せるギャラリー、製品の直売スペースを一体化して、関市が誇る刃物産業をよりわかりやすく伝えることが一番の目的でした。フレキシブルに使えて何十年経っても飽きない、本当にいい空聞ができたことに感謝しています」。

刃物屋三秀

地域にも目を向げた店づくり

ここを造るにあたり、地元のみなさんの協力も欠かせなかったと語る吉田さん。
「三秀を通じて、地域にも経済効果が生まれるような仕組みをつくりたい」と、関でモノづくりを行う杉山製作所の什器をディスプレイで使ったり、包丁専門メーカーのマサヒロや爪切りの匠グリーンベルの刃物を例に、製造工程を紹介したりしています。

刃物屋三秀

「遠方からのお客様をご案内する時に、『この地域は刃物が有名ですよ』と言ってここへ寄ってもらい、『ディスプレイされているのはうちの製品です』と説明してもらえば、商売に広がりが出ると思うんです」。
自社ブランドの製品に限らず、関で製造されているさまざまな刃物を直売しているのもそういった理由からだそう。
「ギャラリーを見て、いろいろな体験をすると1時間はかかります。ここでの滞在時間を増やすことによって、観光客が地元の飲食店を利用する機会も増えると期待しています」とのこと。

刃物屋三秀

生まれ変わった「三秀」は、関市の観光ハブとしての役割も担っています。

刃物屋三秀
関市小瀬950-1
Tel.0575-28-5147
8時30分〜17時 無休
http://www.hamonoyasan.com/

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