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【地震に強い家をつくる】 地道な実験を繰り返し進化を続ける耐震構法SE構法

2023.08.08 SE構法 コラム written by 宮部英門

1995年、阪神淡路大震災の教訓を得て「地震に強い木造住宅を」と開発された耐震構法SE構法。柱や梁そのものをお互いに剛接合し強固な構造躯体をつくり上げます。

在来軸組工法の弱点を専用の金物で補い、基礎も躯体も構造計算(許容応力度計算)を実施する地震に強い木造工法。

人の命を守る構造を追求し続ける現場の視察レポートをお伝えいたします。

優れた木構造とするには

優れた構造とするには、

「鉄は強すぎない方が良い。」

「木は強い方が良い、または弱すぎない方が良い。」

と話すのは、株式会社エヌ・シー・エヌの田鎖社長。

人命を預かる木造住宅の構造を司る者として、建物の倒壊を防ぐ(人命を守る)ため、地震時のエネルギーをどのように逃がせばよいのか。

「みなさん構造は単に強ければ強い方が良いとお考えのようですが、実は違うんです。」

構造自体が強すぎたらエネルギーの逃げ場がなくなり建物は破壊される。

建物が破壊されるということは、住人の命を危険にさらしてしまう。

地震時のエネルギーというのは、必ずどこかで逃してやらないといけない。

エネルギーの逃げ場がないと、構造(建物)そのものを破壊することになります。

では、構造を破壊することなくエネルギーを逃すにはどうしたら良いのでしょうか。

建物が倒壊せずエネルギーを逃すためには、構造材と接合部、それぞれの強度とそのバランスが鍵になります。

構造として目指すのは、

「思惑通りに接合部が壊れてくれる」という状態をつくりだすこと。

建物の倒壊を防ぐために最も重要なことは、柱を壊さない(折らない)こと。

接合部の金物が強すぎると、柱を壊し建物が倒壊する危険に。

だからといって柱を強くし過ぎても、オーバースペックでコストのみが高額となり意味を成しません。

ましてや接合部が弱ければ、柱の引き抜きや欠損が生じ倒壊に繋がります。

そのために最低限必要なこととして、

無垢材よりも強度があり、均一な品質で生産されるエンジニアリングウッドの柱と梁を採用すること。

これは、ヤング係数は勿論のこと含水率も正確に把握する必要があり、製品としての最低基準値を必ずクリアしていることが肝心だからです。

つぎに、在来軸組工法の継ぎ手や仕口を補強するための金物よりもさらに安定した強さと粘りのある金物が必要であり、SE構法のために開発された専用の金物であるSE金物を採用すること。

※熊本地震レベルだと金物で補強した建物であっても倒壊している。

「思惑通りに接合部が壊れてくれる」

この「木」と「接合金物」の最適なバランスこそ、

耐震構法SE構法が生み出した最適解であり、積極的に基礎研究を実施するデータの蓄積や活用。年間1,000件にもなる構造計算の実績を研究にフィードバックするといったサイクルを継続できる仕組みが存在するこも、他の金物工法とは比較にならないSE構法の大きな特徴と言えます。

耐震構法SE構法を支える木造技術センターの存在

木構造技術センター・ティンバーストラクチャーラボ(埼玉県川口市)


通称、ティンバーラボを取り仕切るのは、株式会社エヌ・シー・エヌ 技術開発部の小谷竜城氏。
東京大学大学院博士(農学)。博士論文として、「集成材の繊維方向に埋め込まれたラグスクリューボルト接合部の引抜抵抗メカニズムの解明と設計式の提案」2017年度を執筆。


ティンバーラボは、「SE構法の追求」「全ての木構造の開発」「未来に向けた基礎研究」の3つの目標を掲げる研究拠点です。

根幹商品であるSE構法で実現可能な木構造の範囲を広げるべく、開発スピードの向上と設計者からの要求・要望に柔軟かつ迅速に対応できるようティンバーラボを活用。また、SE構法以外の様々な木構造の開発に取り組みながら、基礎研究を実施しデータを蓄積。さらに、産学連携でも未来の木構造に向けて研究を進めています。


ティンバーラボでは、 木構造で重要な接合部の開発を重視し、これに対応した試験設備を設置しています。 これは地震で木造建築物が倒壊する要因の1つに接合部の弱さが挙げられることや、 SE構法の特徴でもあるラーメン構造を実現するためには接合部が重要となるからです。 また、近年ではその接合部も高強度かつ多種多様なディテールが存在するため、これらの開発で“使える”設備を設置しています。

ティンバーラボの主な試験設備の紹介

1000kN万能試験機

耐震構法SE構法 ティンバーラボ 柱脚金物 引張実験イメージ①

1000kN万能試験機は、接合部や部材の圧縮・引張実験を行うための試験装置で、 最大1000kN (100t)×最大ストローク500mmの加力が可能です。 試験装置に設置可能な試験体の寸法は、 幅2m×奥行き (スパン) 4.5m×高さ2mです。 特徴としては、 前後に張り出した架台で、 架台には 幅方向と奥行き方向に100mmピッチでM24のねじ加工が施されてい ます。 これは、様々な形状の試験体や実験方法への対応を想定したものです。

 1000kN万能試験機では、柱や梁部材はもちろん、 合板やCLT といった面材料の実験も想定して幅1mまで設置可能な加力梁や支点を保有しています。 また、 水平面に対する角度が30度、45度、60度の 3種類の斜め架台も保有しており、これを使うことでトラスやプレース などの斜材端部の接合部実験が可能です。 これ以外にも、一般的な接合部実験をはじめ様々な実験に対応できるような治具を準備しています。

SE金物 PB12と柱における引張実験の様子

下の写真は、実験により折れ曲がったSE柱脚金物とドリフトピンの様子。どちらも、想定される範囲での破損はなく、高い次元での粘りを証明しています。

耐震構法SE構法 ティンバーラボ 柱脚金物 引張実験イメージ②
耐震構法SE構法 ティンバーラボ 柱脚金物 実験後の様子イメージ③
耐震構法SE構法 ティンバーラボ 柱脚金物 ドリフトピン 引張実験イメージ④

200kN面内せん断試験機

耐震構法SE構法 ティンバーラボ 水平加力実験 耐力壁 ラーメンフレームイメージ⑤

耐力壁やラーメン、 床、 屋根の水平加力実験を行うための200kN面内せん断試験機は、最大200kN (20t)×最大ストローク1000mmの 加力が可能です。

実験可能な試験体の最大寸法は、スパン4.5m×高さ3.5mです。 試験機の特徴は、フレームが口形ではなくL形であることで、これによって天井クレーンが試験装置架台の上部まで可動可能となり、大断面集成材やCLTなどを使った大型の重量のある試験体でも安全かつ効率良く設置・解体作業が可能です。

耐力壁とラーメンフレームの水平加力実験の様子

下写真は、耐力壁が柱から剥がれている様子。せん断力に優れたJAS特類1級合板を採用していることもあり、大きな破損を起こすことなく一部CN釘が抜けているのが確認できる。

耐震構法SE構法 ティンバーラボ 水平加力実験 耐力壁 ラーメンフレームイメージ⑥
耐震構法SE構法 ティンバーラボ 水平加力実験 耐力壁 ラーメンフレームイメージ⑦

恒温恒湿器・送風定温恒温器

耐震構法SE構法 ティンバーラボ 送風定温恒温器 実験イメージ⑧

恒温恒湿器は、温度と湿度を温度 -20℃ ~ +85℃ 湿度 40% ~ 95%の範囲で調整可能で、内寸が幅500mm×奥行き390mm×高さ600mm です。 温湿度環境がコントロールできるため、部材や接合部の耐久性や品質管理のための実験が可能です。 

送風定温恒温器 (乾燥機) は、温度を室温+10℃ ~ +250度の範囲で調整可能で、内寸が幅600mmx 奥行き500mm×高さ500mmです。温度のみのコントロールですが、 木材の乾燥や高温状態での木材の強度評価に利用できます。どちらも材料系の研究機関や企業では当たり前のように所有していますが、金物や構法開発がメインの企業では所有していないことが多い設備です。 

木構造技術センターでは、基礎研究の推進が設立の趣旨の1つであるため、恒温恒湿器と送風定温恒温器(乾燥機) の設置は必須と考えました。

集成材の燃えしろ設計に関する燃焼試験や金物の塩害耐久試験

その他、ティンバーラボでは、耐震構法SE構法に採用している集成材の燃えしろ設計に関する燃焼試験や、専用の金物であるSE金物の塩害耐久試験なども繰り返し行うことで、命を守る木構造、SE構法のバージョンアップに取り組んでいます。

耐震構法SE構法 燃えしろ設計に関する燃焼実験イメージ⑨
耐震構法SE構法 SE金物 カチオン電着塗装 塩害耐久実験イメージ⑩

上写真、カチオン電着塗装されていない一般的な金物(塩害地域で約100年分の負荷をかけた状態)

耐震構法SE構法 SE金物 カチオン電着塗装 塩害耐久実験イメージ11

上写真、カチオン電着塗装されたSE金物(塩害地域で約100年分の負荷をかけた状態)

耐震構法SE構法 地震に強く暖かい家イメージ12

(写真左)小谷氏、(写真右)田鎖社長

まとめ

2023年7月中旬。埼玉県川口市にある、木造技術センター(ティンバーラボ)を訪れました。

当日は、株式会社エヌ・シー・エヌの田鎖社長と技術開発部の小谷氏に施設を案内していただき、実際に試験を間近で見学することができました。


耐震構法SE構法に出逢って15年。木造住宅において高い耐震性能を有している耐震構法SE構法に惚れ込み、その性能を信じてこれまで取り組んできました。今回の訪問を経て感じることは、これまで信じてご提供してきた住まいが間違いなく安全であるということと、今後さらに自信を持ってお勧めできる木構造であるということを確信しました。


国内には、集成材と金物を使った工法がいくつも存在していますが、それらと耐震構法SE構法との決定的な違いは、「命を守る」という使命を一番に掲げ実践しているかどうかではないでしょうか。輸送のしやすさや施工のしやすさといった企業側のメリットばかりを優先している工法とは根本的に異なるものであり、比べる必要もないでしょう。


いまだに、ネットやチラシなどで散見する「耐震等級3相当」。「相当」という文句に表れているよう、曖昧な耐震性の家では命を守ることはできません。まずは、災害から身を守ることができる高い耐震性を有した構造のうえに、光熱費を抑え健康を維持できる高い断熱性能を有した家づくりを進めてはいかがでしょうか。


家を建てる本質は、そこにあると考えます。

■耐震構法SE構法で建てた実際のお住まいをご紹介

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